府中から、未来をつくる会社たち ②

2026年5月18日、地域課題解決型メディア「府中が好き」では、公開取材イベントを開催しました。

第1部のテーマは、地域とともに成長する会社経営。

登壇したのは、府中で活動する3名の経営者です。

株式会社BLP 代表取締役の若度千尋さん。
株式会社emari 代表取締役の大角梓さん。
そして、トゥエルブフォー株式会社 代表取締役であり、当メディア「府中が好き」を運営する中嶋大悟。

モデレーターは、株式会社One Purpose 代表取締役であり、未来創造企業の東日本チーフプロデューサーを務める明石知樹さんです。

3人に共通していたのは、もともと府中出身ではなかったこと。

若度さんは、就職やアルバイトをきっかけに府中と関わり、美容室を中心に複数の事業を展開。
大角さんは、結婚を機に府中に住み始め、管理栄養士・ヨガインストラクターとして活動。
中嶋は、子育てをきっかけに府中へ移り住み、Webマーケティングや中古車リース、そして地域メディアの運営を行っています。

最初から「地域のために」と考えていたわけではない3人が、なぜ地域に目を向けるようになったのか。

自社の売上だけではなく、地域に向けた活動をすることで、会社や事業はどう変わっていくのか。

経営者同士の対話から、これからの時代の経営のヒントが見えてきました。

明石さん
今、地域のことにも取り組まれていますが、地域に目を向け始めたのは昔からだったのでしょうか。

また、未来創造企業にチャレンジしたきっかけがあれば教えてください。

若度さん
私にとって府中は、ずっと「働く場所」でした。

第二の故郷のような場所ではありましたが、最初から「府中市をどうにかしたい」という視点で働いていたわけではありません。

自分のお店に来てくださるお客様に喜んでもらうこと。
スタッフが喜んでくれること。
スタッフがやりたいことを叶えること。

私の中では、それがすべてでした。

転機になったのは、未来創造企業との出会いです。

もともと私は、美容の仕事を通じて、人生の最後まで元気に過ごせる人を増やしたいと考えていました。

日本では平均寿命が延びる一方で、人の手を借りながら暮らす期間も長くなっています。
健康なうちから正しい知識に触れ、できるだけ長く元気でいられる人を増やしたい。
そんな思いがありました。

美容師は、お客様と長く関わり、信頼関係を築ける仕事です。
だからこそ、髪を切るだけではなく、健康や介護予防につながる情報を届けることができるのではないか。
健康なうちに知っていれば選べることが増えるし、少しでも長く自分らしく過ごせる人を増やせるかもしれない。

当時の私は、美容師がお客様に健康情報を届けることに大きな可能性を感じていました。
その先に、「介護がない社会」に近づける道があるのではないかと思っていたんです。

この考えが本当に正しいのかを突き詰めていく中で、高橋さんから、
「君がやっている仕事は、文化をつくることなんやろ」
と言われました。

その言葉をきっかけに、介護の課題だけではなく、美容の文化そのものを変えることで、もっとたくさんの課題解決につながるかもしれないと気づきました。

ただ、それを実現するためには、私一人が学んだり、良い環境にいたりするだけでは何も変わりません。
私が見ている景色を社員にも見てもらい、一緒に未来を考えていく必要がある。
そう思い、社員と一緒に未来創造企業へチャレンジすることを決めました。

明石さん
未来創造企業のチャレンジは、社員さんと一緒に取り組むのが基本になっています。
大角さんは、若度さんのチャレンジを横で見ていたそうですが、何か感じたことはありましたか。

大角さん
私は、若度さんの美容室にずっと通い続けています。

未来創造企業にチャレンジしていた5ヶ月間、美容室に行くたびに「なんか雰囲気が違うな」と肌で感じるようになりました。

少し前までは、若度さんがひとりで「頑張るぞ」と走っているように見えていたんです。

でも、スタッフの皆さんが「今からみんなでミーティングするんです」と動き始めたり、お店全体が少しずつ明るくなったりしていきました。

私自身も、髪を切って帰るだけではなく、スタッフの皆さんと会話する機会が増えていったように感じています。

若度さん

私が一方的に伝えるだけでは、スタッフの意識はなかなか変わらないと思っていました。

だからこそ、自分がいる環境に社員を連れていこうと思ったんです。

美容室も飲食店も全部お休みにして、未来創造企業の研修に参加してもらいました。私が説明するより、その場を体験してもらった方が伝わると思ったからです。

未来創造企業へのチャレンジを通して、社員から、

「それって“未来創造企業らしくない”ですよね」
「そのゴミの分別方法、違くないですか」

とフィードバックが来るようになりました。

気づいたら、私の知らないところで店長がお客様とイベントをしていたこともあります。

社員が主体的に動くようになったことは、大きな変化だと感じています。

明石さん
実際にチャレンジしてきた中で、どのような変化がありましたか。
取り組む前と後の違いも含めて、お話しいただけますか。

中嶋

自分の会社や事業を説明するときの順番が変わりました。

以前は、

「Webマーケティングで企業のお手伝いをします」
「車の買取をどこよりも高く買います」

というような伝え方をしていました。

でも今は、

「この地域のメディアを運営し、地域の方からお仕事をいただきながら、地域と一緒に発展していきたいんです」

と伝えています。

地域のお客様がいて、その上に自分の事業がある。
まず地域があって、その中で自分たちは何ができるのかを考えるようになりました。

いい地域をつくるために活動し、そのための手段として、車の買取やWebマーケティングの事業があります。

地域の発展を支えるという意識に変わったことが、一番大きいと思います。

大角さん
一番大きな変化は、「私はずっと食のことしか考えてこなかったんだ」と気づいたことです。

食が好きだから食を仕事にしてきましたし、食で健康をつくるためにヨガも取り入れてきました。

でも、経営理念を考えていく中で、
「私がつくりたい社会は、食だけでなくてもいいんじゃないか」
と思ったんです。

私がつくりたいのは、人と人が助け合うことが当たり前になる地域です。
そのためのツールとして、今は食やヨガを使っているのだと気づきました。

経営理念から「食」という言葉を外せたことは、私にとって一番大きな変化でした。

明石さん
地域のことに取り組むようになった経緯について教えてください。

大角さん
きっかけは、地域でヨガのレッスンを始めたことでした。
府中の自治会のスペースや、調布の団地の集会所を借りてヨガを始めると、少しずつ顔見知りが増えていきました。

ただ、ヨガのレッスンは基本的に体を動かす時間なので、1時間の中で深い会話が生まれることは多くありません。

そこで、食を取り入れてみることにしました。
「私はご飯を作るので、別の日にみんなで食べませんか」
そう声をかけて、ランチ会を開いたんです。

すると、ヨガの時間にはあまり話していなかった方たちが、食卓を囲んだ途端に、4時間ほど話し続けていました。

家族のこと、実家の食事のこと、レシピのこと、日々の悩みごと。
食べながら、飲みながら、自然と会話が生まれていきました。

食卓には、人と人を近づける力がある。
そう感じたことが、地域ダイニングを始めるきっかけになりました。

明石さん
これからの地域が生き残っていくために、残れる地域と残れない地域の差はどこにあるのでしょうか。
この地域をより良くしていくために、今考えていることを教えてください。

中嶋
一番の課題は、地域のコミュニティ不足だと思っています。

他の地域から引っ越してくると、最初は知り合いがひとりもいません。
何かあったときに「助けて」と言える関係性も、簡単には作れません。

だからこそ、人と人が交流するきっかけを、地域の中にどう作っていくかが大切だと思っています。

たとえば、事務所を使って場所を開くこと。
メディアを通して情報を届けること。
経営者同士のコミュニティをつくること。
防災イベントなどを通じて、お客様同士が出会う場をつくること。

そうした一つひとつの接点が、人と人の関係性を育てていくのだと思います。

地域のインフラというと、道路や建物のようなハード面を思い浮かべるかもしれません。
でも、人と人がつながるソフト面のインフラをつくることも、これからの地域には必要です。

それは、地域で商売をしている私たち地域企業が担うべき役割のひとつだと思っています。

明石さん
最後に、これからどんなことにチャレンジしていきたいかをお聞かせください。

若度さん

今の一番のチャレンジは、仲間を増やすことです。

1社だけではできないことにも、どんどん取り組んでいきたいと思っています。

たとえば、美容師資格を持っている人は約140万人いると言われていますが、実際には美容師として働いていない人も多くいます。

一方で、介護が必要な方の訪問カットを担う人は不足しています。

美容師の資格を持っているけれど、今は美容師として働いていない人たちが、もう一度、美容師として輝けるステージをつくることができれば、地域の課題解決にもつながるはずです。

これは府中だけではなく、日本全国で起きている問題だと思っています。
だからこそ、美容ディーラーさんや地域の仲間と一緒に、業界を変えていきたい。
同じ思いを持つ仲間が増えることで、社会は変わるし、良くなっていくと思っています。

大角さん

子どもからご年配の方まで、誰もがいつでも気軽に集まれる場所をつくっていきたいです。

ただ、そこには課題もあります。

そういう場所にふらっと来られる方は、すでにある程度、人とのつながりがある方なのかもしれません。
本当に届けたいのは、そうした場にも来られない方たちです。

どうしたら来ていただけるのか。
どうしたら、自然に巻き込んでいけるのか。

そこを考えていくことが、これからのチャレンジだと思っています。

中嶋
チャレンジしたいことは2つあります。

1つは、「府中が好き」のような地域課題解決型メディアを、各地域で立ち上げていくことです。
ひとりで考えられるアイデアには限界があります。
でも、関わってくれる人が増えると、その人の数だけアイデアも増え、進むスピードも変わります。

もう1つは、未来創造企業を増やしていくことです。
1社だけが「地域を良くしたい」と言っても、なかなか声は届きにくいかもしれません。
でも、同じ地域に未来創造企業が複数あるだけで、物事は進みやすくなります。

各地域に未来創造企業を増やし、そこで地域メディアを立ち上げ、地域の課題解決を一緒に進めていきたいと思っています。

3人の話から見えてきたのは、地域活動は本業とは切り離されたものではなく、むしろ事業そのものを深め、広げていくものだということでした。

美容室、食、メディア。
事業の形はそれぞれ違います。

それでも3人の言葉には、「自分たちの仕事を通して、地域をより良くしていきたい」という共通した思いがありました。

未来創造企業へのチャレンジは、その思いを一人ひとりの中にとどめるのではなく、会社の中で共有し、行動へと変えていくきっかけになっていたのかもしれません。

地域に目を向けることで、会社のあり方も、事業の広がり方も変わっていく。

経営者たちの対話から、これからの地域企業の可能性が見えてきました。

次回の記事では、第2部の社員トークセッションから、現場で取り組みを推進する社員さんたちのリアルな声をお届けします。

ライター

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編集部より

「府中が好き」は、ハッピーカーズ府中店 が運営する地域メディアです。
私たちは地域企業として、事業活動だけでなく、 府中がより良い街であり続けるための取り組みに関わり続けたいと考えています。
本記事は、その活動の一環として、府中で活躍する人や想い、取り組みを記録し、発信しています。